ひな子のブログ

かわいい日常と備忘録

反時計回りのホットケーキ

試験終わりにコンビニで雑誌を買って、最寄りの喫茶店へ駆け込んだ。

テーブル三つ、カウンター四席の店内。真ん中のテーブルに座る。今日は涼しい。迷うことなくミルクティとホットケーキをオーダーする。

雑誌のページをめくりながらホットケーキを待つ。卵とバターの匂いにくらくらする。

くらくらするような匂いっていうのは、細い指の持ち主が吸う煙草だとか、新宿駅ですれ違ったブドワールとか、そういうのだけじゃない。直ぐそこで挽いている珈琲豆と、卵と小麦粉と牛乳にバター。少しのクリーム。私にとってはなにより魅力的で、懐かしく、中毒性のある匂い。

私は娯楽には意味を求めたくはない。楽しいから、気持いいからというはっきりしない理由を持って、そこにあってほしい。

この夏で実家を離れる。まだ見ぬ(というかまだ探し始めてもいない)新居の、クローゼットのキャパシティだけが心配だ。

ホットケーキが運ばれてきた。おしぼりで手を拭く。まずナイフでバターを全体に広げ、5分の2にシュガーシロップを垂らす。あたたかいその体にナイフを入れ(型を使って焼いているため、縁はサクッと、中央はふわふわしている。)、45°に切り取る。待ちきれずに直ぐに口に運ぶ。まったくいつ食べても文句のつけようがないホットケーキなのだ。皿を時計回りに少しずらし、また45°に切り取る。一切れは必ず三口で食べきる。この辺りで冷めてきたミルクティをひとくち。猫舌の私には適温だ。反時計回りに減っていく体。四切れ目くらいになると、切ったときに中央のほうがほろほろと崩れ出す。その肉片をナイフでかき集めて、クリームを掬って本体に塗りつける。この儀式を延々と繰り返すのだ。

この間、すごく暑い日に外でキンキンに冷えたアイスコーヒーを飲んだときに初めてコーヒーを美味しく感じた。大人になってしまった、などと思ううちはまだまだ子供だ。

 

試験はあと二日。

f:id:milksexpunk:20170802183650j:image